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ここは櫻井きらと綿帽子が運営する同人サイトです。
主にこの2人がただひたすらに萌を
展開させております。
start/2008年5月6日
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ぱち、と目を開ける。そこは自分の寝室ではなくて、ナナリーが楽しそうに駆け回っている庭でもなくて、母さんが夕食を並べているリビングでもなくて。
無機質で質素な、男の部屋だった。
(……夢じゃない、か)
そんなことを思っておきながら、この現実は夢なんじゃないかと疑うことは、実はもうすでに諦めてしまっていたりする。言わば習慣のようなものだ。全くもって、励みになどなりはしないが。
昨夜私の頬を愛おしげに撫でていた男は、もう出勤したようだ。部屋に人の気配がしなかった。むくりと起き上がって目をこする。両の腕についた手錠がしゃらんと耳障りな音をたてた。
それを目にいれて、眉を顰める。何をするにも邪魔なこの手錠は、あの男が用意したものだった。今更逃げるとでも思っているのだろうか。
(…馬鹿馬鹿しい)
変なことを考えてしまう頭を軽く振って、目蓋を閉じた。
三週間ほど前、私はあの男に、枢木スザクに拉致監禁、加えて乱暴された(乱暴と言っても、決して乱暴な扱いはされなかったが。けどあの行為は乱暴と言うのだろう)。
最初は怖かったし、暴れたり抵抗もしたりした。けど所詮は相手は男で私は女である。勝てるはずもなかった。けど私は出来るだけ抵抗した。しかし抵抗するうち、お仕置きと称して恥ずかしいことをたくさんされたので、諦めた。
どうやら私の判断は正しかったらしく、抵抗しなくなってからは変なこともされなくなった。身体にぐるぐる巻かれていた拘束を解かれ、目隠しと口に回されていたタオルも解かれた。
思えば最初から、あの男は私に優しかった。
最初に家に帰りたいかと聞かれたとき、帰りたいと答えた。けど今は、帰りたいと思うのに、何故か帰りたくないという自分がいる。
早く家に帰って、母さんとナナリーを安心させてあげたいのに。私が二人を支えなければいけないのに。
あの男の傍にいたいだなんて、そんなこと。
(……有り得ない、)
本当に、何を考えているんだろう。相手はいくら優しくとも犯罪者だ。有り得ない。どうかしている。
そういえば、確か本で似たような症例が書いてあったのを思い出した。犯人と被害者が同じ閉鎖空間で長時間寝食をともにしているうち、犯人に対して特別な感情を持ってしまう精神的異常。きっと自分はそれだ。この状況から脱してしまえば、きっとそんなこと思わないに違いない。
(なんとかホルム症候群、だっけ)
なんだか言い訳しているみたいだ、と考えてしまった自分の頭を、とりあえず殴っておいた。
「ただいま、ルルーシュ!」
ばたん、と大きな音をたてて部屋のドアが開いた。満面の笑みの枢木スザクがこちらに駆けてくる。
「お帰りなさい」
「ごめんね、少し遅くなっちゃった。…はい、鍵空いたよ」
「…ありがとうございます」
枢木スザクが家にいる間、私をこの部屋に縛りつけていた手錠にぶら下がる鎖の鍵を外してもらい、部屋を自由に行き来することができる。といってもすることと言えばトイレに行くくらいで、あとは無理矢理枢木スザクの膝に乗せられてテレビを見るだけだ。(逃げようとは思わない。失敗したら今までの比にならないくらいの"お仕置き"が待っているだろうから)
「ルルーシュ、おいで」
ふかふかのソファに、枢木スザクが両手をこちらに広げて座っている。そのふんわりとした笑顔に毒気を抜かれて、小さく溜め息をついてから膝に横向きに座った。
ぎゅう、と抱きしめてくる腕はあたたかい。顔を見られたくなくて(多分赤くなってる)、広い胸に顔をうずめた。「どうかした?ルルーシュ」優しい声だ。酷く、頭がぼうっとする。頭を撫でて髪に指を差し込まれて、どうにかなりそうだった。「枢木、さん」「なに?」言わば習慣のようなものだった。
「家に、帰らせて」
枢木スザクは困ったように微笑みながら、「ごめんね」と言った。相も変わらずいつも通りだった。
(もし枢木さんが、いいよ、って言ったら、)
私は、なんて言うんだろうな。きっと、聞くに耐えないことを口走るんだろうな。そんなことを考えながら、降りてくる唇を黙って受け入れた。
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